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ZEIKENPLUS 2010 Winter

「引当金」について
新日本有限責任監査法人・公認会計士 太田達也

「引当金」とは何でしょうか。会計上は、賞与引当金、退職給付引当金、役員退職慰労引当金、貸倒引当金、投資損失引当金など、さまざまな引当金が計上されるのをよく見ますが、税務上は、貸倒引当金および返品調整引当金など、かなり限定されているようです。会計と税務でその考え方や取扱いに異なる点があるのでしょうか。また、国際会計基準の影響により今後計上対象が増大するようなことはあるのでしょうか。
本稿では、引当金の考え方、引当金の種類、会計と税務の相違点、今後の引当金会計の動向などを総合的に解説します。なお、本稿の意見にわたる部分は、筆者の私見であることをお断りしておきます。

Q1.「引当金」とはなんですか。その性質や定義について教えて下さい。

引当金

支払手形・買掛金や借入金などの債務については、それが債務として確定していることから、負債の部に計上されることは言うまでもありません。ところが引当金は、会計技術上の貸方項目であり、その内容・趣旨をよく整理する必要があります。
すなわち、引当金とは、実際に現金を支出しているかどうかは関係なく、発生主義の観点から、当期に帰属する費用または損失を見積計上するものです。当期に発生したものと合理的に認識される費用については、会計上、これを当期の費用として計上することが要求されます。
引当金の本質は、当期の収益に対応させるべき費用・損失を計上するという考え方であり、損益計算の基本原理である費用収益対応の原則にその論拠を求めることができます。費用収益対応の原則に従って、当期に帰属する収益に対して、当期に帰属する費用・損失を正しく対応させるという考え方であり、それによって毎期の期間損益計算が正しくなるとする考え方がベースにあります。

Q2.どのような場合に、引当金を計上しなければならないのでしょうか。引当金の計上要件について教えて下さい。また、財務諸表との関連性はどうでしょうか。

引当金計上

企業会計原則では、引当金を計上するための要件が明確に定められています。下記の4つの要件をすべて満たしているときは、当期の負担に属する金額を当期の費用または損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部または資産の部に記載するものとされています(企業会計原則・注解18)。
なお、負債の部だけではなく、資産の部に計上するケースもあるという内容になっていますが、それはたとえば貸倒引当金や投資損失引当金のように、評価性引当金と呼ばれる引当金の場合は、資産の評価勘定(控除項目)として表示される(=資産の部においてマイナス残高で表示される)からです。売掛金や貸付金などは、それらの債権金額が確実に回収されるとは限らず、一部が回収不能(貸倒れ)となる可能性をはらんでいます。そこで、一部の回収不能見込額を算定し、これを当期の費用として見積計上すると同時に、同額を貸借対照表の債権金額から控除するために、貸倒引当金を計上します。
なお、引当金は、負債性引当金と評価性引当金に大別されます。これについては、次項で説明します。

引当金の計上要件1

引当金の計上要件2

Q3.引当金にはどのような種類があるのでしょうか。

引当金の種類

引当金の種類としては、先に説明しました負債性引当金と評価性引当金に大別されますが、さらに負債性引当金は「法的債務たる引当金」と「法的債務でない(債務性のない)引当金」に分類できます(右図参照)。
「法的債務たる引当金」とは、企業が負っている条件付債務を表しています。たとえば、退職給付引当金は、就業規則等により退職一時金、退職年金等を支払うことがあらかじめ定められており、雇用契約や労働協約で確約されていて通常は避けることができないものといえます。
一方、たとえば修繕引当金の場合は、特に債務性はありませんが、修繕という費用の発生原因が当期以前の事象に起因しており、発生する可能性が高く、金額の合理的な見積りが可能であることから、会計上の要請から計上が求められるものです。 会計上は、法的債務たる引当金であるか債務性のない引当金であるかを問わず、引当金の計上要件を満たすものについては、必ず計上しなければならないものとされています。

Q4.引当金の税務上の取り扱いについて教えて下さい。

(1)法人税法上の取扱い
法人税法は、本来、債務確定基準を採用しています。すなわち、損金の額に算入すべき金額について、「償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く」と規定されています(法法22条3項2号かっこ書き)。したがって、たとえ将来発生が見込まれる費用で、発生の可能性が高いとしても、実際に発生し確定した段階で損金の額に算入されるのが基本です。
一方、企業会計では、費用収益対応の原則から、将来発生することが見込まれる費用で、発生の可能性が高く、金額の合理的な見積りができるものについては、これを見越して、各会計期間に割り当てる形で引当金を計上するルールが確立しています。法人税法上、この企業会計の要請に応ずるために、別段の定めとして引当金の制度が置かれています。したがって、法人税法上は、法令の別段の定め(=例外)として認められるものであり、企業会計上の引当金よりも相当限定的に認められています。企業会計上の引当金にはさまざまなものがあることはすでに説明しましたが、法人税法上は「貸倒引当金」(法法52条)と「返品調整引当金」(法法53条)についてのみ認められています(注1)。

(2)法人税法上の要件
法人税法上、引当金の繰入れについて損金算入が認められるためには、次の要件を満たす必要があります。
・損金経理を行うこと(確定決算に反映)
・確定申告書に繰入額の損金算入に関する明細の記載があること

また、繰入限度額の規定が定められていますので、繰入限度額の範囲内で、損金経理した金額について損金算入が認められます。なお、青色申告要件は現在ありません。

役員給与と引当金

(3)役員給与と引当金
たとえばX1年3月期の事業年度の役員の職務執行に対して、X1年3月期に係る定時株主総会で支給決議をして、X1年6月に役員給与を支給するとします。この場合、会計上は、X1年3月期の決算において、(決議事項とする額またはその見込額について)役員賞与引当金を計上するのが原則です。なぜならば、X1年3月期の事業年度における役員の職務執行に対する対価と見ますので、X1年3月期の費用と考えられるからです。
一方、法人税法上は、X1年3月期においては債務が確定しておらず、もちろん損金不算入になりますが、X2年3月期においても、役員給与の損金算入要件を満たしていないことが想定されるため、認容もありません(注2)。ただし、支給金額と支給時期をあらかじめ事前に決めていて、所轄税務署(または国税局)にその届出を行っており、その内容のとおりに支給する場合、法人税法上、事前確定届出給与の要件を満たしたうえで臨時の役員給与を支給する場合もあります。たとえばX0年3月期に係る定時株主総会でX0年6月の定時株主総会の日からX1年6月の定時株主総会の日の前日までの職務執行に対してX1年6月に支給する金額と時期をあらかじめ決議しておいて、届出をしたうえでその内容のとおりに支給した場合、X1年3月期の決算において未払金を計上しておいて、それを加算(留保)でいったん自己否認しておいて、X2年3月期において減算(留保)で認容を行い、結果としてX2年3月期の損金の額に算入されることになります。その場合は、税効果会計の一時差異になりますので、回収可能性を判断したうえで繰延税金資産の計上の可否を検討する必要があります。

利益連動給与の場合の留意点

(4)利益連動給与の場合の留意点
法人税法上の利益連動給与を導入している場合、たとえばX1年3月期の利益に関する指標(注3)が確定することにより、一定の算定式により利益連動給与の額も自動的に確定することになります。したがって、X1年3月期の確定債務と考え、損金経理により未払金を計上する処理が必要になります。確定債務である以上、貸方は引当金ではなく、未払金を計上する必要があります。


注1
かつて特別修繕引当金がありましたが、平成10年度税制改正のときに廃止されています。ただし、その廃止による影響の大きさから、特別修繕準備金が租税特別措置により立法され、現在に至っています。
注2
X1年3月期の業績を勘案して、X1年3月期に係る定時株主総会で決議する役員賞与ですので、事前確定届出給与の要件を満たさないことになります。したがって、X1年3月期において引当金の繰入れを否認するために加算(留保)の調整、X2年3月期においては引当金を取り崩すことからいったん容認=減算(留保)の調整を入れると同時に、役員賞与の支給額について加算(社外流出)の調整が必要となります。
注3
利益に関する指標とは、損益計算上の利益に関する指標が考えられ、たとえば営業利益、経常利益、当期純利益などが採用される場合が多いです。

Q5.今後の引当会計の動向はどのようになっているのでしょうか。

企業会計基準委員会は、国際的な会計の動向を踏まえて、引当金の包括的な会計基準の開発に向けて、議論を進めています。
国際会計基準では、IAS第37号が引当金について定めていますが、2005年6月にその改定案(ED)が公表され、計上要件・測定方法の見直しが提案されています。改定案(ED)は、計上要件について、「負債の定義を満たすこと」、「信頼できる見積りができること」の2点に集約し、「発生の可能性が高いこと」(蓋然性要件)を削除する提案をしています。この改定案(ED)と整合性を持たせる会計基準が開発されますと、修繕引当金、特別修繕引当金は計上できなくなります。また、蓋然性要件が削除されますと、訴訟等に関する引当金の計上が新たに求められることになる可能性が指摘されています。企業会計上、特別修繕引当金が計上できなくなった場合、税務上も特別修繕準備金が廃止になる可能性が考えられます。
なお、蓋然性要件が削除された場合、「有給休暇引当金」の計上が必要になることが指摘されていますが、これについては次のコラムをご参照ください。

COLUMN 有給休暇引当金が必要に?

有給休暇制度を導入していない企業はほとんどないものと思われます。有給休暇制度は、入社してから一定期間勤務することによって、従業員に対して与えられる権利です。従業員が有給休暇を取得している期間中は、企業は労働役務の提供を受けていないわけですが、それでも給与を支払う必要があります。実態としてみた場合、労働役務の対価の一部が、金銭ではなく有給休暇として支払われていることになり、労働役務の提供の時期と対価の支払時期にズレが生じていることを意味します。そのため、労働役務の提供を受けている期間に、有給休暇に係る負債(引当金)を計上することにより、期間対応させるという考え方が成り立ちます。

 

有給休暇の引当金

国際会計基準および米国基準においては、有給休暇引当金を計上する実務が定着しており、先ほど説明しました国際会計基準とのコンバージェンスの観点から蓋然性要件が削除された場合は、日本においても計上が求められることが予想されます。ただし、日本においては、未消化の有給休暇を現金で買い取る制度が定着していないことから、有給休暇は労働役務の提供に対する対価(コスト)としてそれほど認識されていません。しかしそうはいっても、有給休暇制度が普及していて、一定の消化率になっていることを考えた場合、国際会計基準とのコンバージェンスの影響により計上が求められることになる可能性が高いことに留意しておく必要があるでしょう。

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