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外国人との団体交渉における使用言語(何語で交渉するか)

2017年12月20日 掲載

 最近では、外国人の労働者を雇用している企業も増加しており、そのような労働者との間での雇用トラブルが発生する例もあります。中には、外部の労働組合に駆け込み、使用者に対して団体交渉を申し入れてくることもあります。その場合、何語で交渉すべきか、ということが問題になります。

 平成28年7月19日、東京都労働委員会がこの問題につき一つの判断を示しました。
 東京学芸大学の附属国際中等学校で勤務する外国人教員が労働組合に加入して、同大学に団体交渉を申し入れたという事案です。組合側は英語で交渉するよう求めましたが、大学側は日本語で交渉するよう求め、通訳も組合側で手配するよう求めました。実際の団体交渉では、組合側が英語で話し、大学側が日本語で話したため、円滑な意思疎通ができず、その後も大学側は日本語による交渉および組合側による通訳の手配という要求を譲らなかったため、交渉が打ち切りとなりました。

 都労委命令は、団体交渉のルールは労使合意で決定するのが原則であるため、使用言語についても当然に日本語を使用すべきとはいえないとし、本件では外国人教員が、職場において日常会話だけではなく業務連絡・指示も英語でやり取りしていることから、団体交渉の場でも英語による交渉を求めたことには相応の理由があるとしました。そして、組合側は、労使双方が互いに相手の言語を理解できる者を同行させることを提案するなど一定の譲歩を示しているにもかかわらず、大学側は、日本語による交渉および組合側による通訳の手配という条件に固執した挙げ句、団体交渉を打ち切っていることから、不合理な条件に固執したものであり、正当な理由のない団交拒否にあたると結論付けています。

 命令主文では、「日本語による交渉並びに同組合らによる通訳者の手配及び同行という条件に固執することなく、誠実な団体交渉に応じなければならない。」と命じられています。
 この命令主文を前提にすると、おそらく双方が相手の言語を理解できる通訳を手配するという組合譲歩案に落ち着くことになるか、あるいは、命令主文では費用負担について言及がないので、いずれかが通訳を手配するものの、費用負担は折半とするといった案に落ち着くことになるかと思われます。

 本来、命令も述べるとおり団体交渉のルールは労使合意で決定すべき事柄です。そして、団体交渉では、お互いに譲歩する義務は負っていないため、自らの提示した条件に固執し、その結果交渉決裂となることも許されています。この理屈からすれば、労使合意で決定すべき事柄そのものについて命令主文で命じることは、譲歩を迫ることと同様であるためできないと考えられています。しかし、「〇〇に固執することなく交渉せよ」、という命令主文だと、事案によっては、最終的な合意内容(落ち着きどころ)がおおよそ定まってしまうことがあります。これでは、本来労使合意で決めるべきルールを労働委員会が強制しているに等しく問題であるといえます。

 裁判所や労働委員会における使用言語は日本語です。民間企業であるからといって、日本国において英語を使用することを強いることが果たして妥当な判断であるかは疑問なしとしません。労使関係ルールに対して、労働委員会が踏み込みすぎているように思われます。外国人労働者が増加している現状において、同命令が今後に及ぼす影響も懸念されるところです。

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